当研究室は東京理科大学 先進工学部 機能デザイン工学科に所属しています.研究室配属を希望される方は以下に記載した研究室の運営方針についてご一読ください.ちょっと長いですが,学生の期待・希望がラボの運営方針と不一致を起こすと,それなりに精神的ダメージを負うこともあるようなので,それらを未然に防ぐためにもここで明記しておきたいと思います.なお,下記の内容はあくまで全体的な方針ですので,個別の事情によっては方針を柔軟に運用する予定です.
博士論文はもとより,修士論文も卒業論文も,研究テーマは自分で決める方針です.よっぽどのこと,それもかなりの緊急事態でない限り,教員からテーマを無条件で与えられたり,ラボの先輩から研究テーマのおこぼれを引き継ぐことはありません.研究テーマはヒト身体運動,中でもロコモーションという枠組みの中で興味を示してほしいと思います.よい研究テーマに出会うためには,日常を観察し,その現象の背後にあることを考え,言語化し,さらに思考を続けるほかありません.しんどい作業ですが,このプロセスこそが,当研究室の教育方針だとお考え下さい.そのため「毎日ラボに来てさえいれば,いつか,誰かが,何かを,無条件で与えてくれるだろう」というマインドをお持ちの方には,当研究室をお勧めしていません.言い換えれば,これを機に,自分で考え,自分で判断し,自分で決断し,自分で行動するということにチャレンジしたい方にはお勧めのラボだと思います.
当研究室における研究成果の発出は英語で行うとお考え下さい.ですので,在室期間全体を通して,英語で読む・書く・聞く・話すトレーニングを継続します.学会発表も,論文を投稿するのも,すべて英語です(卒論や修士論文は日本語です).なんだか洋風かぶれのように思われるかもしれませんが,そもそも先行研究の多くは英語で執筆されていますので,ある程度の英語を使いこなせれば,収集できる情報量も飛躍的に増えるでしょう.そして当研究室にはインターンシップやら短期滞在やら,その他の制度等を利用して,外国籍の方々が高頻度で来室します.なので,英語はコミュニケーションツールとしても必須だとお考え下さい.なお,英語が苦手と自覚されている方にお伝えしたいのは,ここで述べている英語なるものが,大学入試科目の「英語」や種々の資格試験で扱われる「英語」とは異なるという点です.決して複雑・難解な英文法を完全に理解する必要もないですし,専門用語さえ理解すれば,あとは練習量でカバーできる場合がほとんどです.場合によっては中学校程度の簡単な英単語・文法にジェスチャーを加えれば,それなりに意思疎通もできるでしょう.つまることろ「いま英語が得意か」よりも,自分の将来に向けて「英語を磨いていきたいか」というマインドがあるかどうかが重要だと思っています.
当研究室には,学内の先生方・学生・職員だけでなく,学外の研究者,企業の経営者など,様々な年齢層・職種の方々がいらっしゃいます.ですので,このラボに在籍する以上は服装や言動はもとより,立ち居振る舞いに関しても「大人」であることを求めます.高級ブランド服に身を包め,毎日スーツを着用しろ,という意味ではありません.家族・友人・同級生の間でのみ許容されるような服装はやめてほしい,という意味です.また,ラボでの研究はある種の集団生活にもなりますので,整理整頓やゴミの片づけ,挨拶といった一般的なマナーが順守できることも重要です.整理整頓と(最低限の)挨拶を過小評価せずに,しっかりと取り組んでください.そして報告・連絡・相談をしっかりしてほしいと思います.すでに死語化している側面もある言葉ですが,やはりこれらを確実に行える学生ほど,研究に関する不要なリスクを回避し,無駄な遠回りをせずに成果を出している気がします.間違っても,報告も連絡も相談もせず,ボールを渡された状態でバックレてはいけません.信用をなくします.ということで,当研究室ではみなさんに「大人」であることを求めます.
当研究室には,個人からの申し出がない限り(あるいは教員が必要と判断しない限り),コアタイムを設けないようにしています.そもそもラボの在室時間に比例して研究成果が増えるわけでもないでしょうし,自宅やカフェのほうが作業が捗るのであれば,むしろそこで研究を進めてほしい思っています.ただしこれは必ずしも「ラボに来る必要はない」ということではありません.バイオメカニクス系の実験では,安全管理や精神的余裕の観点からも,メンバー間の協力が必要不可欠です.実験するとき,ディスカッションするとき,来客対応するときなどは,可能な限りラボにいてほしいと思っています.また,多くの研究者が経験されているように,ラボに来ることにより,偶発的な出会い・知識に触れることもあるでしょう.リモートワークはある意味で魅力的な働き方ですが,現場でたまに起こる,こうした偶然に出会えないことだけがネックです.ということで,必要な時に必要な場所にいてください.
誰しもが「うまくいく研究がやりたい」ですよね.でも残念ながら,うまくいく研究だけを行う(≒当たる宝くじだけを買う)ことはほぼ不可能に近いです.なかには高確率で当たりくじをゲットする能力(目利き)に秀でた研究者もいるとは思いますが,多くの研究者(この研究室の教員を含む)がそうであるように,実際には「研究がうまくいくように,なんとかしていく」というほうが現実的でしょう.ましてや,初めて研究活動に取り組む学部生にとって,最初からうまくいくことは稀ですし,狙ってこれを実現するのは至難の業でしょう(ビギナーズラックはあるけども).「とりあえず やってみる」というのは,もともと性格が慎重な方や超真面目な方,トライ&エラーを心から嫌う方,そして妙にプライドが高い方(自分をよく見せようとする方)にとっては,とても難しいことです.当研究室では,かなりの頻度でこの「とりあえず やってみる」という言葉が飛び交います.不思議なことに,学部生時代に勉強があまり得意でなかった方が,研究活動になると突如としてエースに変貌を遂げることがありますが,そうした方の多くは自然に「とりあえず やってみる」を実践している気がします.当研究室では,答えがあるかどうか分からない問いにチャレンジしますので,ある程度の楽観性が必要です(あまりにも楽観的過ぎるのはいただけませんが).
「どこの企業に就職できますか?」当研究室の見学に来た学生が,目をキラキラさせてこうした質問を投げかけてきます.わかりません.知りません.興味もそんなにありません.っていうか,それってあなた次第ですよね,としか答えようがありません.指導教員が謎の神通力をつかってゼミ生を大手企業にねじむことなど夢物語です.当研究室を希望される方の中には,就活に不安を抱える大学生特有の感情からか,こうした神通力に期待する方が多くいらっしゃいますが,ハッキリいいます.そんなものないです.そんなものに期待するよりも,このラボの教育方針である「自分で考える」「英語コミュニケーション」「言語化」「とりあえずやってみる」ということを通じて,自分自身と職能を磨くことをお勧めします.少なくともこの研究室では,学部で就職しようが,院進しようが,それ以外の進路を選ぼうが,教員がとやかく口を出すことはありません(ゼミの学生が公序良俗に反する道を歩もうとする場合はさすがに一言くらいは言うかもしれませんが).就職活動やインターンに参加する場合も,事前の連絡や相談等があれば,特に口出しすることもありません.誤解しないでほしいのは,こうした自由な風土は,研究室学生の自由と意思を尊重しているからに他ならず,決して「就活やり放題」のラボではないということです.就職に強い思いを抱くことは尊重しますので,その場合には「このラボでは,研究を通じてどのような職能が磨けるでしょうか?」という質問をしてくれると,教員はうれしいです.